かつての日本の経済史は、「円高の歴史」でした。経済収支の大幅黒字、対外純資産残高世界最大。一時的に「円安」に触れたとしても、再び「円高」に戻るのでは?みんなどこか楽観的にそう考えていたのです。
けれども、いつの間にか、世界の状況は一変していました。かつてのような日本では無くなってしまっていることに。日本に住む皆様は、あまり気づけていないようなのです。
僕は幸いなことに、2003年に当時勤務していたメーカーの海外転勤によって、家族と共に半ば強制的に海外に移住することになりましたが。そこで見たリアルな光景は、年を追うごとに、海外での日本の位置づけが、崩されていく様でした。
そこで僕は、2005年頃から、会社からもらっていたお給料も、わざわざ人事部にお願いしてまで、100%全額、海外での現地通貨にしてもらいました。当時より、日本円の価値は確実に落ちていくだろうと、日々の生活の中で、実感できていたからです。
確かに一時期、1ドル70円台まで円高が進みましたが。その後見事に、「円安」が加速。なんと当時と比較した日本円の価値は、米ドルに対して約2分の1まで暴落してしまったのです。資産の大多数を、米ドルや、海外の不動産に変えていたこともあり。おかげさまで何もしなくても、当時投資していた資産的なものが為替面だけでも2倍以上に膨らんでしまったことになります。
本格的に「円安」が始まったのは、「コロナ禍」が落ち着いた後でしょうか?僕が「コロナ禍」中に、無理やり米国ハワイに渡航した時はまだ、「1ドル105円」だったのですが、その後、2022年3月、4月頃から、本格的に「円安」が加速したと記憶しています。
「ドル円」は、2022年で約113円→152円(−35%)2023年で約127円→152円(−20%)「円安」が加速し始めたのです。そして、2024年・・・1ドル160円台も記録してしまいました。今は1ドル150円前後に戻りましたが・・・。この背景にはどんなことが起こっているのか?
インターネットやテレビのニュースのヘッドラインに語られていることを鵜呑するのではなく。本質的な部分を、解き明かす必要があると思います。なぜなら、多くの方々は、今なお、日本円でお給料をもらい、銀行口座の中に、日本円のまま置いている状態なのですから。
「通信・コンピューター・情報サービス」
「為替」は日米の「金利差」だけで動くのではありません。本質的には、「需要と供給」です。世界中の誰がどの国の通貨を必要としているのか?そのバランスです。
そんな中で、2022年の「貿易サービス収支」では、大幅な資源高と円安が直撃して、マイナス21兆円と、過去に例を見ない規模の赤字を記録しました。2022年、2023年のたった2年間だけでマイナス30兆円を超える赤字が出てしまっていたのです。これは、日本における、日本円の需要と供給のバランスに、歴史的な歪みが見られた瞬間です。
この部分で目立つのが、「通信・コンピューター・情報サービス」での赤字。「GAFAM」に象徴される、米国の巨大IT企業が提供する、プラットフォームサービスなどへの支払いでした。「コロナ禍」の最中に、「在宅ワーク」「DX」が、盛んに叫ばれていましたが。日本では、政府の共通クラウドは、
・Amazon Web Service
・Google Cloud Platform
・Microsoft Azure
・Oracle Cloud
の4事業者が採用されています。米国企業のサービスを利用すれば当然、米ドルの支払いが必要になり。「円を売って、米ドル」で支払うことになります。これは政府だけではなく、企業や個人でも、全く同じです。
例えば僕たち個人でも、写真や動画、Kindle本や映画を保存すべく、iPhoneやiPadのクラウドストレージにに月額課金すれば、やはり「円を売って、米ドルを買う」を自宅から一歩も外に出なくてもすることになります。また、2023年に本格的に台頭した、OpenAIの「ChatGPT」の有料版を利用しても、同様に円を売って、米ドルを買い続けていることになります。
・Amazon
・iPhone
・Microsoft
・・・毎月一体どのくらい米ドルのサービスに課金し続けているのでしょうか?これが、国民みんなが行っているのです。逆に、これらを使わずに、日常生活を送れるイメージがつかなくなってしまいましたよね・・・。
企業の宣伝広告「専門・経営コンサルティングサービス」
以前であれば日本の企業が、広告を投入する際、電通や、博報堂、ADKなどの企業にお願いをしていました。僕も現役サラリーマン時代は、テレビCFや雑誌広告のために、この手の日本の大手広告代理店の担当者とのやり取りをしていました。
ところが、今では「インターネット上」に広告を投入する機会が増加。その際は、日本の企業ではなく、Google、Facebook、Instagramなどの米国企業に宣伝広告費を支払うことになります。これは、「貿易サービス収支」の中では、「専門・経営コンサルティングサービス」に計上されています。
この部分も、「コロナ禍」を堺に、一気に上昇した部分ですね。宣伝広告を投入すればするほど、日本企業が日本国内で稼いだお金の一部が、日本円から米ドルに両替されて、米国に送金され続けます。インターネット上での企業広告の効果が出れば出るほど、この流れが加速することになりますね。
企業の「研究開発サービス」
「研究開発サービス」の赤字も拡大しています。研究開発に関するサービス取引の他、研究開発の成果である、産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権)の売買などがここに計上されています。今日時点では、時代の最先端の研究と開発は、日本ではなく、米国を中心に行われています。
彼らが開発した、何かをビジネスに活用した場合、特許権、実用新案権、意匠権という形で、日本円を米ドルに両替して、米国に支払う必要が出てきます。ちなみに、この部分では僕たち個人も大きな赤字貢献してしまっています。
定額制の動画・音楽配信サービス。例えばYouTubeを視聴したり、NetflixやAmazon Prime、DISNEY+、Huluなどを通して、動画を視聴すると。著作権等使用料として、日本円を米ドルに両替して、米国に支払われることになります。
僕も、日本のクレジットカードで、NetflixやAmazon Prime、DISNEY+の有料会員になっていますが、まさにこの赤字計上に、貢献してしまっているわけですね・・・。
「デジタル赤字」が「資源輸入規模」を超える!?
スマホやタブレット、パソコンを通してクラウドサービスを使えば「通信・コンピューター・情報サービス」の赤字に貢献。YouTubeや、Google検索、Facebook、Instagramに広告を投入すれば、「専門・経営コンサルティングサービス」の赤字に貢献。NetflixやAmazon Prime、DISNEY+の動画を視聴すれば「研究開発サービス」の赤字に貢献。
日本国民の全ての日常活動に密接に関わっている、IT関連の行動全てが、「貿易サービス収支」の赤字に貢献してしまっています。さらに日本は島国で、車に乗ったり、電気を使ったり、その動力源の多くを、輸入に頼っています。
大手商社を中心に輸入している資源、これも貿易赤字に貢献するポイントです。かつての日本であれば、この手の「資源輸入」を超える規模で、日本国内の物・サービス・情報を、海外に輸出していたのですが。この「デジタル系の赤字」が、ドカンと大きく乗っかってきていて。それが今後、さらに拡大する予測が立ってしまっているのです。
もはや今日においては、資源同様に、日本の政府・企業・個人全員に必要不可欠なものになってしまった米国発の「デジタル」。ある種の「資源」とも、言えるので、絶対に減りようがありませんね。
日本の政府・企業・個人が、今更「デジタル」の利用を、全員ピタッと止めることは、考えられませんからね。今後、2030年頃には、「デジタル赤字」の規模が、「資源の輸入」を超えてくるという予測も立ち始めています。。
自分と家族を守るための「米ドル&米国投資」
他にも急速な「円安」を呼び込んだ要因として、先日説明した「円キャリートレード」もありますが。その「円キャリートレード」も、こうした日本の「貿易サービス収支の赤字」に乗っかる形で「ウォール街の鷹」たちが利用していたとも言えます。
長期的に見ても、日本の国民総動員で、日本円を米ドルに両替して、米国に支払い続ける流れが加速させているわけなので。やはり、この点から見ても、短期的には「円高」に触れたとしても。この貿易赤字は、今後さらに加速して行くしか道がありませんし。
日本に観光に来られた外国人が日本で落とすお金では、到底賄いきれない規模。中長期的には、「円安」の流れは、止まらないと思います。そんな中で、日本に住み、日本円でお給料をもらい続け、日本円のまま銀行預金していたとしたら。将来、本当に大変なことになってしまうと思います。
こうした流れの中で、真剣に「資産運用」を学び、未来から逆算した具体的な対策を講じる必要が出てくるわけなのですね。そのお手伝いをさせて頂いているのが、「北の株式投資大学」でもあるのですが。
残念ながら、僕たち自身も、日本円を米ドルに両替して、米国に投資をしてしまっているので。。。ある意味中長期的な「円安・ドル高」に貢献してしまっているという、現実があるのですが。僕たち個人と家族を守るためにも、もうそうせざるを得ない・・・というのが正直なところなのです。。
今は一時的に、「円高」になっているし、時合で株安になって来ているので、このタイミングを好機に、本価格的に日本円を米ドルに両替して、米国株に投資をすることを、推奨せざるを得ない状況です。
「北の株式投資大学」 https://m.kitasociety.com/k-univ