むかしむかし、ある静かな森に、いつも活気に満ちたジョニー・ウサギと、ゆっくり歩くタロー・カメがいました。ある日、二人は山のふもとで出会い、次のような話を始めました。
「おいタロー、どうしてお前はいつもそんなにゆっくりなんだ?もっと速く進めば、もっと大きな果実を得られるんだぜ!」とジョニー・ウサギが笑いながら言いました。タロー・カメはゆっくりと首を伸ばし、答えました。「いやいやジョニー、急いでも足元を見なければ転んでしまう。それに、今のままでも何とか食べていけるから、十分さ。」ジョニー・ウサギは呆れたように耳をぴょんぴょん動かしました。
「そんな考え方じゃ、この先、他の動物たちに置いて行かれるぞ!」ジョニー・ウサギは毎月、森の動物たちに新しい果物や食べ物を売り始めました。彼は自分の速さとアイデアを活かし、次々と新しい商品を出しました。「今月はベリーのジュースだ!」「来月は特別なナッツだ!」と次々に商品を変えながら、動物たちの注目を集めました。
一方、タロー・カメは、自分の畑でゆっくりと野菜を育て続けました。けれども、育てるのはいつも同じキャベツや大根ばかり。「動物たちはこれで満足してくれるさ」と、タローは頑なに自分のペースを守り続けました。1年後、森には大きな変化が訪れました。ジョニー・ウサギの店は大繁盛し、森中の動物たちが集まりました。
「ウサギさんのおかげで新しい味を楽しめる!」と、みんながジョニーの店を訪れるようになりました。一方で、タロー・カメの畑には動物たちがあまり来なくなりました。「キャベツは好きだけど、毎回同じじゃ飽きちゃうよ」と、動物たちは言いながらジョニーの店に向かっていきました。
タローは悩みましたが、「でも、これまでと違うやり方をするのは怖いし、リスクがあるかもしれない」と、変わる勇気を持てませんでした。ある日、激しい嵐が森を襲いました。ジョニーの店は嵐に耐えるため、強い柱を立て、柔軟に屋根を作り替えました。嵐が過ぎた後も、店は無傷で、さらに新しい商品を準備して動物たちを迎えました。
一方、タローの畑は嵐に耐えることができず、大部分の作物が流されてしまいました。新しい作物を育てる余裕もなく、タローはますます遅れを取ることになりました。ジョニー・ウサギはタロー・カメに言いました。「タロー、挑戦する勇気と速さがないと、この森で生き残れなくなるんだよ。変化を恐れずに進むことが大事なんだ。」
タロー・カメは少し考えて言いました。「たしかに、変わるのは怖い。でも、このままだと本当に森に取り残されてしまうかもしれない。」それからタロー・カメは少しずつ変わり始めました。新しい野菜を育てる挑戦をしたり、動物たちが楽しめるような畑のイベントを開いたりしました。そしてジョニー・ウサギのアドバイスを受けながら、少しずつ歩み始めました。
ジョニー・ウサギとタロー・カメは、異なる速さで同じゴールに向かって進む仲間となり、森の中に新たな価値を生み出すことができました。10年後・・・ジョニー・ウサギが富と権力を手に入れてから10年が経ちました。彼の事業はますます拡大し、森のほとんどの土地や産業を支配するまでになりました。
動物たちはジョニーのサービスを利用することが当たり前となり、彼の名前は森全体に知られるようになりました。一方、タロー・カメはジョニーに農地を売却した後、ジョニーの農場で小作人として働くようになりました。毎日同じ畑でキャベツを育て、収穫を終えると、それをジョニーの倉庫に運ぶ単調な日々を送っていました。
タローは働きながら思いました。「昔は自分の畑を持ち、自由に作物を育てていたのに、今ではジョニーの指示に従うだけの生活だ。どうしてこうなってしまったのだろう。」彼は何度も昔の生活を取り戻したいと考えましたが、どうすればよいか分かりませんでした。
周りの動物たちに相談しても、「ジョニーには逆らえない」「彼のシステムの中で生きていくしかない」と言われるばかりでした。ある日、タローは決意しました。「もう一度、自分の力で立ち上がろう。新しい畑を作り、昔のように独立して生きるんだ。」しかし、その挑戦はすでに遅すぎるものでした。ジョニーは森のほとんどの土地を所有しており、タローが新しい畑を作れる場所はどこにもありませんでした。
さらに、ジョニーは農業に必要な種や肥料、道具の供給も支配していたため、タローは何一つ始めることができませんでした。タローが森の奥に見つけたわずかな荒地で作物を育てようとすると、ジョニーの部下がやってきてこう言いました。「ここはジョニー様が購入予定の土地です。勝手に使うことは許されません。」
追い返されたタローは、もはや抗う術を失い、肩を落としてジョニーの農場に戻りました。ジョニーはタローが戻ってきたことを知ると、冷たい笑みを浮かべて言いました。「タロー、君には小作人としての才能がある。私の農場で働き続ければ、君は食べるものに困らないし、安全な暮らしが保証されるよ。」タローは何も言えませんでした。
ジョニーが築いた巨大な仕組みの中で、自分がいかに小さく無力であるかを痛感したからです。それからもタローはジョニーの農場で働き続けました。毎日同じ畑で同じ作業を繰り返す生活は、何十年も変わりませんでした。やがてタローは老いて力を失い、畑で働くことも難しくなりました。
しかし、ジョニーはタローを農場から追い出すことはなく、「年老いた小作人」として、タローを象徴的な存在として残しました。動物たちはこう囁きました。「タローのように頑張り続けても、挑戦しなければこの結果になるんだ。」一方でジョニー・ウサギはますます富を蓄え、森を超えて隣の地域にも事業を拡大しました。
彼は新しい技術やサービスを導入し続け、多くの動物たちを顧客として取り込みました。タロー・カメは、自分の力で何かを変えることができないまま、静かにその生涯を終えました。彼の人生は「努力を続けても、変化を恐れる者の行く末」として語り継がれることになりました。こうして、ジョニー・ウサギとタロー・カメの物語は幕を閉じました。
しかし、賢い動物たちはこの物語をただの昔話だとは思いませんでした。彼らは気づいたのです・・・今さらカメが営んでいたような畑に投資をしても、そこから得られる収穫はわずかで、日々の暮らしを豊かにはできない、と。一方で、ジョニー・ウサギの企業は、森中を駆け巡り、新しい果実を次々と実らせ、収穫のたびにますます大きな力を得ていきました。
その勢いは止まらず、森の境界を越え、遠くの土地にまで届いていたのです。動物たちはこう考えました。「もし私たちがカメの畑に投資を続ければ、何も得られないだろう。でも、ジョニー・ウサギの果実に投資をすれば、私は走らずとも彼の速さに乗って利益を得ることができるはずだ。」
そして彼らは決断しました。「タロー・カメの畑ではなく、ジョニー・ウサギの果実を分けてもらおう。それが、私たちの未来を守る唯一の方法だ」と。親愛なるあなたへ、この物語を心に刻みなさい。
もしあなたが、これからの人生で少しでも富を増やし、安心して暮らしたいと願うなら、タロー・カメのように「変化を恐れる者」に賭けてはいけません。ジョニー・ウサギのように「挑戦を続ける者」に乗り、長期的にその果実を享受するのです。それが、敗者である私たちにとって唯一無二の生き残る道なのです。
さあ、あなたはどちらを選びますか?足元に根を張るカメの畑を信じますか?それとも、世界を駆け巡るウサギの果実を信じますか?答えは、すでに心の中にあるはずです。
<登場人物>
ジョニー・ウサギ
毎月新しいアイデアを生み出し、勢いよく走り続ける米国の企業の象徴。常に新しいことに挑戦し、止まらないエネルギーを持つ。
タロー・カメ
安定志向で、何年経っても同じやり方を続ける日本の企業の象徴。堅実だが、変化を恐れる性格。
「北の株式投資大学」への入口 https://m.kitasociety.com/k-univ