日本の「お金持ち」の基準は?

僕たちが「お金持ち」と呼ぶ人々は、どの位の資産を持っているのでしょうか?また、自分がその層に近づくためには、どのように考え、行動すればよいのでしょうか?日本の富裕層の現状と、その背景にある資産形成の実情について見てみましょう。

『野村総合研究所』によると、日本の全世帯数は約5,570万世帯。そのうち「お金持ち」とされるのは、5億円以上の金融資産を保有する「超富裕層」と、1億円以上5億円未満を保有する「富裕層」を合わせた、わずか165.3万世帯(全体の約2.96%)とのことです。

しかし、彼らが保有する純金融資産の総額は469兆円と、日本全体の約26.1%にあたる非常に大きな比率を占めています。つまり、3%にも満たない人々が、4分の1以上の資産を保有しているということになります。「純金融資産」とは、世帯として保有している預貯金、株式、債券、投資信託、生命保険や年金保険などから、住宅ローンやカードローンなどの負債を差し引いた額のことを指します。

例えば、貯金が1,000万円あり、住宅ローンが500万円残っている場合、その世帯の純金融資産は500万円という計算になります。超富裕層は11.8万世帯で、1世帯あたりの平均金融資産は11.4億円、全体で135兆円を保有しています。富裕層は153.5万世帯、平均で2.17億円を保有し、総額は334兆円です。

次に位置する「準富裕層」は、5,000万円以上1億円未満の資産を持つ403.9万世帯で、平均8,244万円、総額333兆円と、富裕層と遜色ない規模となっています。さらにその下の「アッパーマス層」(3,000万円以上5,000万円未満)は576.5万世帯、平均4,891万円、総額282兆円です。

そして、最も多くの世帯が該当する「マス層」(3,000万円未満)は4,424.7万世帯、総資産は711兆円、平均資産額は1,606万円となっています。注目すべきは、「お金持ち」とされる層の資産が、この2年間で105兆円(28.8%)も増加しているという点です。この背景には、株式市場の上昇や円安による外貨建て資産の価値増加がありました。

「いつの間にか富裕層」

特に、株式や投資信託などの一般的に言われる「リスク資産」を多く保有していた富裕層が、その資産の評価額の上昇により一気に資産を増やしたことが挙げられます。また、資産形成の進展により、準富裕層から富裕層へ、富裕層から超富裕層へと昇格する世帯も増えています。

こうした動きの中で、「野村総合研究所」は「いつの間にか富裕層」という新しい層を指摘しています。これは、給与収入の範囲内で堅実な生活を続けながらも、従業員持株会や確定拠出年金、NISAなどの制度を活用して、資産運用を地道に続けてきた結果、いつの間にか資産が1億円を超えていたという人々です。

40代後半から50代の会社員が多く、日々の生活は質素でも、資産だけが静かに膨らんでいたというケースが目立ちます。この「いつの間にか富裕層」は、全体の富裕層世帯の中でも1〜2割程度を占めているとされており、アッパーマス層や準富裕層から徐々にステップアップしていく流れの中で、無理なく富裕層に達するという、現実的で再現性の高いモデルといえるでしょう。

一方で、急激に資産が増えたことにより、金融知識が追いつかず、リスクの高い商品を適切に理解せずに購入してしまうケースも指摘されています。資産を増やそうとするだけでなく、それを失わないための「金融リテラシー」の知識が求められます。また、今後増加が見込まれる層として、「スーパーパワーファミリー」があります。

これは、都市部に住む大企業の共働き世帯で、最終的に年収3,000万円を超える可能性のある世帯を指します。子育てや住宅ローンで一時的に家計が圧迫されるものの、キャリアの進展により40代から資産形成が加速し、50代で富裕層に達するケースが想定されています。

地方在住であっても、生活コストが抑えられることで年収1,000万円以上の共働き世帯は富裕層になりうるポテンシャルを持っています。このような事例を見てみると、今はまだ「マス層」や「アッパーマス層」にあるサラリーマンでも、堅実に積立投資を行い、節約と資産運用を継続することで、10年・20年後には準富裕層、さらには富裕層へと到達することが可能だということです。

米国の家計はどうなのか?

今、トランプ政権で、話題になっている、「米国」の状況はどうなのでしょうか?日本に住む僕たちにとって、米国は時に「借金大国」「浪費社会」としてのイメージがあるかもしれません。確かに1980〜90年代の米国は、借金による消費が常態化し、金融危機や不況を幾度となく経験してきました。

けれども、2024年時点に公表されていた米国の家計の実態を見ると、かつてのイメージとは大きく異なる状況だと分かります。まず注目すべきは、「資産に対する負債の割合」が劇的に低下していることです。2008年のリーマンショックをピークに、家計の負債比率は年々減少し、2024年には過去最低水準である11%台にまで落ち込んでいます。

これはつまり、米国の一般家庭が資産形成において「借金に依存しない」健全なバランスシートを築きつつあるということです。この背景には、米国の税制改革があります。かつては、住宅ローン金利が大きく控除対象となり、「借りれば借りるほど節税になる」という時代がありました。

それがバブル崩壊や金融危機を招いた反省から、現在では住宅ローン控除は非常に限定的となり、借金を多く抱えるインセンティブがほぼ消滅しました。ニューヨークのような都市部では、マンションが3億円する一方で、借入できる金額は1億円程度が限度という現実があります。

結果的に、多くの家庭が「無理をしないローン生活」へとシフトしたのです。借金を減らした結果、家計は貧しくなったのか?というと、むしろ逆です。米国の家計の「純資産額」は、2020年以降、急激な伸びを示しています。

2020年には平均で約1億円程度だった純資産が、わずか数年で平均2億円にまで倍増しました。「家計資産の平均値が2億円・・・」この驚異的な資産形成の背景には、コロナ禍での財政出動と、株式市場をはじめとする資産価格の上昇があります。

「MMF」に1,000兆円積み上がってる米国

もちろん、これはあくまで平均値であり、すべての家庭が2億円を持っているわけではありません。数百億円規模の資産を持つ富裕層の存在が平均を大きく引き上げている一方で、依然として生活に困窮する層も存在します。

しかし、全体としては家計の資産水準が底上げされており、それは明確な事実として捉えるべきです。さらに注目すべきは、証券会社が提供する「マネーマーケットファンド(MMF)」への資金の流入です。MMFとは、日本でいう普通預金のような位置づけの金融商品で、元本が安定しており、かつ現在では年4%以上の利回りを提供しています。

このMMFに滞留している資金は、なんと7兆ドル(約1,050兆円)にも上り、日本のGDPの約2倍という莫大な金額が、株式市場に向かう前段階としてスタンバイしているのです。なぜこれほどまでの現金が証券会社にとどまっているのか?その答えは、米国政府の大規模な財政政策と、それを支える中央銀行(FRB)による国債の買い入れ政策にあります。

2020年以降、政府から大量に供給された現金が市場に流れ込み、それが個人の家計にまで届いた結果、余剰資金としてMMFに滞留しているのです。この状況を踏まえると、米国人の多くは、ただ節約しているのではなく、「借金を抑えつつ、資産を運用し、キャッシュは高利回りのMMFで待機させる」という非常に合理的な資産管理を行っていることがわかります。

そしてその裏側には、政府の制度設計や金融政策、そして何よりも「金融リテラシーの高さ」が見て取れます。翻って日本の家計状況を見てみると、総務省の2023年調査によれば、二人以上の世帯での金融資産の平均は約1,904万円、中央値は715万円。単身世帯では平均1,492万円、中央値は500万円です。

平均と中央値の大きな乖離からもわかるように、富裕層とそれ以外の差が顕著に開いてきている状況です。このように、米国の家計が進めている資産形成の道筋は、日本のサラリーマンにとっても学ぶべき点が非常に多いのです。特に、無理のない負債管理、政策を活かした運用環境、そしてキャッシュの賢い活用(たとえば日本ではNISAやiDeCo)といった点は、今後日本でもますます重要になるテーマといえます。

いま米国から学ぶべきこと

現代の日本において、「お金持ちになる」ことは、もはや一部の限られた成功者だけの話ではなくなりつつあります。とくに、資産形成の知識と手段を持つ者にとっては、10年、20年という時間をかけて確実に資産を増やすことができる時代です。

「いつの間にか富裕層」が増えている状況から分かること。「米国の家計」から見えてくること。この両者から見えることは、「お金を貯めることに加えて、賢く増やす「資産運用」を実践する」ということです。

日本では依然として、銀行預金を中心とした「貯蓄型」の資産管理が根強く残っています。しかし、低金利が続く中では、資産は増えるどころかインフレによって目減りしてしまうリスクさえあります。そこで推奨できるのが、米国株投資を中心とした長期的な資産運用です。

米国企業は、世界の最先端を走るイノベーションの担い手であり、株主への還元にも積極的です。安定した成長を続ける一方で、株主に配当や自社株買いというかたちで利益を分配しています。米国市場に投資できるETF(上場投資信託)を通じて、リスクを分散しながらも世界経済の成長の恩恵を享受することが可能です。

さらに、日本では「NISA制度」により、最大で年間360万円、総額1,800万円までの非課税投資が可能です。この制度を活用することで、配当や値上がり益を非課税で受け取ることができ、より効率的に資産を増やすことができます。現金で眠っている資金をただ置いておくのではなく、米国株をはじめとする投資対象へと振り分けることで、「静かな資産形成」を実現できるのです。

つまり、いま求められているのは、日々の生活を抑えて節約することではなく、資産が自動的に収益を生む仕組み。「お金の働かせ方」を変えることなのです。「いつの間にか富裕層」になるためには、自らの稼ぎだけではなく、資産そのものに働いてもらう環境を整えることが鍵となります。

あなたが「お金持ち」を目指すなら、まずは自分がどの層に位置しているのかを把握し、次にどのようなステップで上位層へと近づけるのか、その戦略を立てることが第一歩です。その戦略構築に、「北の株式投資大学」を活用してくださいね。

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