会社員として働いている間、「肩書き」という強力な装備を身につけています。名刺一枚で商談が成立したり、会社名だけで信頼を得られたり、役職名があるだけで相手の態度が変わる。これはある意味、社会が与えてくれる“信用の前借り”です。

しかし、その肩書きは永遠ではありません。定年、リストラ、早期退職、会社の倒産・・・理由が何であれ、肩書きはある日突然あなたの手から離れます。そしてその瞬間、人は「裸の自分」に戻されます。名刺の裏側に隠していた弱点、欠点、不安。会社のブランドが覆い隠していた未熟さ。役職が作り出していた“擬似的な自信”。それらすべてが露出します。

たとえば50代後半で退職したAさん。大手メーカーで管理職として働き、周囲からも尊敬される存在でした。しかし退職後に100社へ応募しても、返事はほぼゼロ。面接に進めた企業からも、若手への優先採用という現実を突きつけられました。

Aさんはこう言いました。「会社を離れた瞬間、自分には何も残っていないと気づいた。」これは決してAさんだけの話ではありません。むしろ今の日本では会社員が、「ほぼ全員が直面する未来」です。なぜなら、会社の信用は“会社のもの”であって、“あなた自身のもの”ではないからです。

会社の看板があるから信頼され、会社の実績があるから任され、会社の肩書きがあるから人が丁寧に扱ってくれる。しかしその信用の大半は「あなた個人」ではなく、「会社組織」が持っていたものです。僕たちはその事実を、現役中にはなかなか理解できません。

なぜなら、肩書きという“強力なフィルター”が、すべての現実を隠してくれるからです。しかし・・・肩書きが外れた瞬間、“本当の自分”と向き合うことになります。

・自分に何ができるのか?
・社会でどんな価値を生み出せるのか?
・誰が自分を必要としてくれるのか?
・自分の信用は本当に存在していたのか?

これらがすべて露出するのです。この現実から逃げることはできません。しかし、事前に“備える”ことはできます。肩書きを失う前から、「個人として信用を築く」という姿勢を持っておくこと。これこそが、これからの時代を安心して生きるための最も重要なテーマになります。

“個人の信用”とは何か?

会社の肩書きが取り払われた瞬間、「自分には何が残るのか?」多くの人が直面するこの問いは非常に重いものです。実は、信用には2種類あります。

(1)組織に付随する信用(借り物の信用)
(2)個人が積み上げた信用(自分の信用)

会社員時代は(1)の恩恵を大きく受けています。

・大企業である
・上場企業である
・管理職である
・担当部署である
・名刺を持っている
・会社の歴史がある

これらはすべて“個人としてのあなた”に対する信用ではありません。しかし働いている間、そのことを忘れてしまいます。「自分が評価されている」と勘違いしてしまう。でも実際は“会社の信用の代理人として扱われている”ことがほとんどです。では、「個人の信用」とは何か?肩書きを外したときに残るものこそ、あなた自身の信用です。

・誰かがあなたに相談したいと思うか?
・あなたと一緒に仕事をしたいと思うか?
・あなたに任せたい案件があるか?
・お金の流れに参加する資格があると思われるか?
・あなたの判断・姿勢・習慣が信頼されるか?

これが“個人の信用”です。これは会社の肩書きでは作れません。作れるのはあなたの日々の行動、姿勢、言葉、約束、継続だけです。個人の信用は「実力」ではなく「姿勢」で決まります。信用は能力とは別物です。能力が高くても、

・約束を守らない
・一貫性がない
・成果がブレる
・責任を取らない
・言い訳をする

こうした姿勢の人は信頼されません。逆に能力が平均的でも、

・言葉に一貫性がある
・誠実である
・学ぶ姿勢がある
・他者を尊重できる
・継続して努力している

こうした姿勢を持つ人は信頼を得ることができます。信用は一気に作ることはできません。小さな行動の積み重ねだけが、信用という“見えない資産”を育てます。

・期限を守る
・約束を守る
・学びを続ける
・嘘をつかない
・自分を過信しない
・人を大切にする

こうした点の積み重ねが、ある日“線”になり、やがて“面”となり、他者から見て確実に「信頼される人」へと変わります。会社の信用がゼロになったとき、あなたを支えるのは個人としての信用、ただそれだけです。

信用構造を築く具体的ステップ

では実際に、どのようにしてその信用を築いていくのか?「長期的な信用構造」をつくるための実践的ステップを解説します。

ステップ1:まず“生活費の自立”をつくれ
個人としての信用を築く上で、実はもっとも重要な土台は「生活費を自力で稼げる状態」です。なぜなら、生活費が不安定な状態では、人の判断は短期的になり、長期的な信用構造は絶対に築けないからです。生活が不安だと人はどうしても・焦る・萎縮する・選択肢が狭まる・誤った行動に走りやすいという傾向を避けられません。信用は「落ち着いた精神」からしか生まれません。だからこそ、就労や副業などで自力で生活費を賄える状態は必須条件です。

ステップ2:“姿勢”を整える
信用は能力ではなく“姿勢”で作られるものです。・約束を守る・嘘をつかない・言い訳をしない・責任を持つ・学びをやめない・誠実である・人を大切にするこうした姿勢は、すぐには成果には現れません。しかし、長期的には必ず信頼となって返ってきます。信用は“行動の習慣”でできています。

ステップ3:個人としての「価値の核」を決める
個人の信用は「何を提供できる人なのか?」によって決まります。
・話を聞ける
・文章が書ける
・人を応援できる
・整理が得意
・行動できる
・気づける
・継続できる
大きなスキルである必要はありません。“あなたらしい価値”をひとつ持てば、それが信用の核になります。

ステップ4:継続を習慣化する
信用は「継続」なしには成立しません。・継続して発信する・継続して学ぶ・継続して行動するどれでも構いません。“続けている人”は必ず信頼されます。継続は、信用のもっとも強い証明です。

ステップ5:信用を“見える化”する
信用は見えない資産だからこそ、「形にしておく」ことが重要です。
・発信(SNS・ブログなど)
・人間関係
・実績のメモ
・学んだことの記録
・行動の履歴
・紹介される環境
・マイ会社法人
・金融資産
・年収と所得証明
・資産性の高まるモノ
・マイホーム・別荘
・車

これらはすべて「あなたの信用の証拠」となります。名刺の肩書きが消えても、あなたが積み上げた“個人の信用構造”は残ります。これは会社がくれるものではなく、あなた自身が作り上げる資産です。

肩書きが消えても生きていける人へ

会社員の間は、どうしても「自分は会社に守られている」と錯覚してしまいます。名刺が信用を与え、役職が自信を与え、会社が“安全地帯”を作ってくれているように見えるからです。しかし現実は違います。会社のブランドも、役職の肩書きも、給与という保障も、すべては“条件付きのもの”です。そしてその条件は、ある日突然、切り替わります。

その瞬間、人は「裸の自分」に戻されます。しかし・・・その状態を恐れる必要はありません。なぜなら、個人としての信用は“いまから育てることができる資産”だからです。信用は・学び・姿勢・誠実さ・継続・人間関係といった“行動の積み重ね”から作られます。

お金があっても、肩書きがあっても、人生は不安定になることがあります。しかし、「個人としての信用構造」を持っている人は、どんな環境でも仕事を作ることができ、人との関係を築くことができ、人生の“自由”を失いません。今のあなたがどの段階にいても構いません。生活費を稼げていなくても、副業に挑戦していなくても、信用を積み上げていなくても大丈夫です。

重要なのは「いま気づいた」という事実です。気づいた人から、人生の軌道は変わります。今日からできる一歩は、・継続・誠実・学びという小さな習慣です。あなたが積み上げたその行動こそ、会社の肩書きよりも強い“本当の信用”になります。