セブに到着したその日は、まさに忘れられない一日となりました。空港に降り立ち、南国の湿った空気を吸い込んだ直後、マグニチュード6.9という大地震に襲われたのです。マクタン島に僕が所有している別荘に向かい、Grabタクシーで敷地内に入った瞬間、突然すべての照明が一斉にシャットダウンしました。
周囲の街灯も消え、あたり一面が闇に包まれた光景は今でも鮮明に記憶に残っています。車の中にいたため、強い揺れそのものは体感できなかったのですが、エントランスの警備員や人々の行動を通じて、それが大地震であったことを知りました。建物の住人たちは避難のために建物から外へ、広場で不安そうに身を寄せ合っていました。
僕自身も荷物を持ったまま自宅に入ることができず、外で深夜2時になるまで待つことを余儀なくされました。長い時間が過ぎ、ようやく建物の中に戻れたとき、幸いにも部屋はほとんど無傷でしたが、胸の奥には「いつ何が起きるかわからない」という現実を刻み込まれました。
今回セブを訪れたのは単なる滞在や休暇ではありません。セブの不動産の売却準備をするためでした。かつては高い成長率を誇り、海外投資家の資金も流入していたこの市場ですが、今後10年を見据えると、大きな上昇を期待することは難しいと考えています。人口増加や都市開発の恩恵はすでに価格に織り込まれており、これから先のリターンは限定的になっていくでしょう。
さらに今回のような自然災害リスク、建物の維持管理、外国人としての規制や税制の変化など、不動産が抱える特有の制約も無視できません。一方で、今の僕が信じているのは米国株の持つ成長力です。米国は世界経済の中心であり、テクノロジー企業をはじめとしたリーディングカンパニーが集積しています。
過去の実績を振り返っても、5年で5倍、10年で10倍といった株価成長を実現してきた企業は枚挙にいとまがありません。むしろ状況によっては、5年で10倍以上という速度で資産を増やすチャンスすら現実的に存在します。だからこそ僕は、今回のフィリピン不動産を売却し、その資金を米国株へと乗せ換える決断をしました。
大地震という予期せぬ出来事を体験したことは、偶然とはいえ自分の決断を後押しする出来事になったと感じています。建物は壊れるかもしれない、価値は下がるかもしれない。しかし米国株の成長は、人類の技術革新や社会の進化とともに積み上がっていきます。
「資産をどこに置くか?」この問いに対して、僕は未来10年を見据え、より大きく育つ可能性のあるフィールドを選びました。セブの別荘は10年以上に渡り、僕に思い出を与えてくれましたが、これからの資産形成においては米国株に託す。その選択に迷いはありません。この夜の出来事は、不動産の持つリスクと有限性を改めて教えてくれると同時に、自分が進むべき方向を鮮明にしてくれた出来事だったのです。
日本の不動産投資の危険性
続いて、日本の不動産について考察していきたいと思います。投資用不動産について、現状を踏まえて行きたいと思います。まずは、日本不動産の市場観と「タワーマンションか?一戸建てか?」という対立軸です。不動産業者たちの裏情報によると、「一戸建てはもう上がる可能性はゼロ、タワマンは上がる可能性がある」とされています。
一方で、一戸建て派の見解も根強く、議論は二極化しています。実際に不動産会社の内部では「最後のババ抜きの一周が始まった」という言葉まで出ているほど、今は上昇局面の終盤感覚が広がりつつあります。タイミングの難しさは明らかです。10年以上不動産業界で生業をしてきた方々も「わからなくなってきた」と戸惑いを示している状況です。
さて、不動産購入のメリットはどこにあるのか?経済的な部分だけでなく、実は「自慢できること」が最大のメリットだという心理的な側面がまず挙げられます。SNSにアップすれば「いいね」がつき、周囲から祝福される。子育て世代なら、幼稚園で「うちは賃貸?分譲?」といった会話から子どもが「うちは貧乏なんだね」と受け取り、親の購入意欲が急に加速するというエピソードもあります。
こうした心理的圧力が購入動機を強めるのです。また、老後に住む場所を確保できる安心感は大きなメリットです。居住用住宅には売却や相続時に税優遇があり、一定の合理性もあります。ただし、資産価値上昇を目的とすべきではありません。自宅は投資商品ではなく嗜好品です。上がる下がるで一喜一憂するのではなく、居住満足や生活の質を優先すべきなのです。
一方で、不動産は「家は負債」であるという考え方が必要です。簿記上は資産として計上されますが、自分にお金を運んでくれずキャッシュアウトが続くものは負債にほかなりません。建物は減価償却で価値が減り続け、永遠に上がり続けることはありません。2006年前後のリーマンショックや2011年の震災のように下落した例も多くあります。
マイホーム「戸建てか?マンションか?」
現在の価格上昇も日銀の量的緩和による金余りが主因であり、賃金上昇や生産性向上といった健全な理由によるものではありません。日本の賃金やGDPは30年間停滞しており、世界的に見ても初任給が20年で2倍以上になった国が多い中、日本は上がっていません。所得が伸びないのに不動産だけ上がるのは不自然であり、今後の下落可能性が高いのです。
利回りも低下し、東京の都心部では3%を切る水準。これは中国沿岸部や香港、台湾と同等ですが、日本は成長力が違うため整合性が取れません。さらに、バブルの終盤は「ババ抜き」のように、もうカードがないのにゲームを続けている状態です。市場心理が変われば一気に逆回転します。
僕も、昔からインターネット関連の不動産業界の方々の人脈があり、たまに情報交換をしていますが。彼らの本音ベースでは、「もう終わりが近い」と感じている。だからこそ、投資目的ではなく、嗜好品として欲しい人は早めに買えばいいという切り分けが重要になります。
なぜなら、家族の時間は有限だからです。子供と一緒に4LDKに住める期間は10年未満というケースも多く、思い出作りを優先するなら早く買うことに意味はあります。ただし、生活満足度を犠牲にしてまで「売りやすさ」優先の小さい家を買うと、家族の不満が長く続きます。面積選定はリセールよりも家族の幸福を優先すべきです。
戸建てとマンションを比較すると、戸建てには土地資産性が残るメリットがあり、改装自由度も高い。一方マンションは管理の恩恵があるものの、建て替え問題など合意形成の難しさを抱えます。駐車や規制の自由度を重視するなら戸建てといったところでしょうか?
「投資用不動産」は乗せ換えのタイミング
加えて金利動向も見逃せません。日経平均と不動産は半年遅れで連動する傾向があり、株が上がれば不動産も上がりやすい。ただし日銀の金利引き上げ観測が出れば市場は敏感に反応します。変動金利が上がれば住宅ローンの負担が増え、買える人が減り、需要が下がり、価格は下押しされます。
そして外資の動向も大きな要因です。現在、東証の投資家の7割は外国人。不動産でも北海道の土地や温泉宿が外国人に大量に所有されています。円安で買われやすい一方、円高に転じれば一気に売られるリスクがあります。国内需要の下支えが弱いまま、外資の資金で価格が動く状況は非常に危ういのです。
実際に、今回僕が訪れた「セブ」でも、まさにこの問題に直面しています。このように、日本の不動産市場はいま終盤の空気を帯びており、楽観的に資産が増えると信じ込むのは非常に危険です。
僕が皆さんに強くお伝えしたいのは、不動産を“負債”と認識し、嗜好品として買うならタイミングを逃さず早めに。投資用としては、既存の物件からより有利な条件に乗せ換えることを前提に、冷静に出口戦略を考えることです。
「不動産を制するものは人生を制する」と言いますが、制するとは「振り回されずに主体的に選択する」ということです。過去の常識や業者の言葉に騙されることなく、真実を理解し、適切に乗せ換える判断をしていってもらいたいと思います。
追伸「不動産」に関する「無敗」の考え方や戦略術も、「地下ソサエティ」の中で学べます。「地下ソサエティ」の説明会を兼ねたセミナー(期間限定公開)→ https://joinnow.live/s/mgP9yX