半年前の自分が、何をしたか思い出せますか?
年に数回、上司との、評価面談があります。その席に着いたときのことを、思い出してみてください。この半年、自分は何をやってきたか?それを言葉にして、伝えようとする。ところが、多くの方は、直近の一か月ほどの記憶だけで、話してしまいます。半年前に何をしたかなど、正直、覚えていないのです。
春先に、大きな案件をまとめた。夏の手前で、後輩の相談に、何度も乗った。部署をまたいだ面倒な調整を、引き受けたこともあった。どれも、評価されるはずの働きです。それなのに、面談の席では、きれいに、記憶から抜け落ちている。
ここに、知っておくべき事実が、一つあります。上司が部下を評価するとき、最も重く見るのは、具体的なエピソードです。いつ、何を、どうしたのか?その事例を持っている人ほど、高く評価されます。ところが人間の記憶は、半年前の出来事を、そのままの形では、保てません。
つまり、まじめに働いたかどうかではなく、その働きを、覚えているかどうかで、差がついている。まじめな人ほど、損をする。そういう仕組みに、なっているのです。となりの席の同僚を、思い浮かべてみてください。働きぶりは、あなたと、そう変わらない。いや、むしろあなたのほうが、地道にやっている、かもしれない。
それなのに、面談から戻ってきた表情が、なぜか、晴れやかだった。その人は、半年の働きを、きちんと覚えていた。あるいは、どこかに、書き留めていた。ただ、それだけの違いです。能力の差では、ありません。記録していたか、していなかったか。その一点なのです。
評価は、上げるものではなく、資産にするもの
人事評価と聞くと、どうやって評価を上げるか、という話だと、思われがちです。けれど、本当に大事なのは、もっと先にあります。自分の働きをきちんと記録し、それを評価の言葉に翻訳する。この力そのものです。なぜ、これが大事なのか?会社を離れて、自分で事業を持ったとき、自分の働きを測ってくれる人は、もう、どこにもいません。
上司がやってくれていたことを、すべて自分でやることに、なります。目標を立て、進み具合を測り、できたところと、できなかったところを、自分で判定する。誰も採点してくれない世界で、自分を正しく評価できる人だけが、前に進めます。会社にいるあいだは、その訓練を、給料をもらいながら、受けられます。
月謝を払うどころか、月給をもらいながら、練習できる。こんなにありがたい場所は、そうそうありません。そして、この評価を管理する力は、役職定年で肩書きが消えても、再雇用で年収が下がっても、手元に残り続けます。他にはなかなか残らない、一生モノの持ち物です。
僕自身、会社員だった頃は、この評価シートを、ただの面倒な提出物だと、思っていました。毎年、締め切りの前になって、あわてて埋めて、出したら忘れる。その繰り返しでした。あれが、自分の働きを値づけする、またとない訓練の機会だったと、気づいたのは、ずっとあとのことです。
会社を出て、誰も評価してくれなく、なってから、ようやく分かりました。この力の、いちばん難しいところは、数字にならない部分に、あります。売上や達成率なら、数字で出ます。けれど、責任感。周囲との協力。自分から動く姿勢。こういったものは、数字にできません。だから、自分の言葉で、語るしかない。
ここで、心強い味方がいます。国です。厚生労働省が、職業能力評価基準というものを、公開しています。2002年に公表され、今では50を超える業種について、どういう行動が評価につながるのか、その行動の例まで、細かく整理されています。しかも無料で、誰でも手に入れられます。数字にならない働きを、どう言葉にすればいいか。そのお手本を、国がただで配ってくれている。
これを取りに行かない手は、ありません。もう一つ、役職に就いている方に、お伝えしたいことがあります。管理職の評価は、平社員のそれとは、見られる場所が違います。自分がどれだけ成果を出したか?それ以上に、部署全体をどうまとめたか?部下をどれだけ育てたか?そこが問われます。
部下の昇格や、他部署からの評判までが、評価の材料になります。つまり、50代になるほど、数字にならない働きの比重が、重くなっていく。だからこそ、その見えにくい働きを、記録して言葉にする力が、効いてくるのです。
毎晩30秒。それだけで、面談が変わる
では、育てたAIは、ここで何を、してくれるのか?いちばんの働きは、日々のあなたの働きを、覚えておいてくれることです。やり方は、とても簡単です。一日の終わりに、30秒ほど。今日、何をしたかを、声で吹き込む。ただ、それだけです。帰りの電車の中でも、寝る前の布団の中でも、かまいません。
手が空いていなくても、声なら出せます。今日はあの案件で、こういう判断をした。あの後輩に、こう助言をした。思い出したそばから、口に出していく。きちんとした文章に、する必要はありません。ひとりごとで、十分です。その短いつぶやきを、AIが文字に起こし、評価のどの項目に、あたるのかを、自動で仕分けして、積み上げていきます。
半年も続ければ、面談の前には、この半年、何をしてきたかの記録が、きれいな形で、手元にそろっています。もう、薄れた記憶をたぐり寄せて、しどろもどろになる必要は、ありません。使い方は、まだあります。三か月に一度、AIに、こう頼みます。この三か月の動きから、面談で伝えるべき強みを、いくつか選び出してほしい、と。
すると、自分では見えていなかった強みが、はっきりと、浮かび上がってきます。さらに、上司の立場に立って、自分を採点してもらう。そういう使い方も、できます。そこで、よく起きることがあります。自分では低く見ていた点を、AIは、思いのほか高くつける。
多くの50代が、自分の力を、実際より低く見積もっています。まわりは、もっと期待しているのに、本人だけが、自分を見限っている。そのずれを、面談の前に、目に見える形で、確かめておける。やっていない項目も、同じように見えてきます。何が足りていて、何が抜けているか。それがはっきりすれば、次に何をすべきかも、おのずと決まります。
この、何をすべきかを決める作業も、AIに手伝ってもらえます。評価の目標には、二種類あります。数字で決める、業績の目標。これは、比較的立てやすい。難しいのは、数字にならない、行動の目標のほうです。責任感を持って動く。周囲と協力する。自分から手を挙げる。
こういったものを、どう目標に落とすか?多くの方が、ここでつまずきます。取り込んだ評価の基準をもとに、この期の行動目標を、自分の職位と部署に合わせて、いくつか設計してほしい。AIに、そう頼めばいい。たたき台が出てくれば、あとは自分の言葉で、整えるだけです。
数字で出る成果のほうも、放ってはおきません。売上や達成率の数字を、AIに読み込ませれば、月ごとの成績表を、自動でまとめてくれます。目標とどれだけ離れているか。なぜ離れたのか。来月は何をすべきか。そのたたき台まで、AIが出してくれます。面談で数字を問われても、その場しのぎの言い訳を、探す必要は、もうありません。
給料をもらいながら、一生モノを持ち帰る
毎年、同じ一枚の紙を、多くの人が記入して、提出します。そして、出したら忘れる。けれど、その紙は、使い方次第で、まったく違うものに変わります。ただ埋めて出すだけの、一枚の紙か。それとも、自分の働きを測る技術を、身につけるための教材か。同じ紙が、一方ではフォルダの肥やしになり、もう一方では、役職定年後も消えない、一生モノの武器になります。
定年まで勤めれば、この紙を埋める機会は、まだ何十回も残っています。その一回ずつを、ただの作業として流すか。腕を磨く稽古として、使い切るか。積み重なれば、とてつもない差になります。その差を生むのが、AIです。エンジニアゼロ。コードスキルゼロ。プログラミング経験ゼロ。
その状態から、Claude、ChatGPT、Geminiという、三つのAIを、自分の手足として、育てていく。会社を、ただ給料をもらうだけの場所で、終わらせるか。それとも、給料をもらいながら、一生モノの技術を持ち帰る、学校として使い切るか。五つの財布の、一つ目。もらう、という財布は、この一枚の紙から、始まります。今日は、ここまでにします。次は、二つ目の財布。稼ぐ、という財布に、AIをどう組み込むのか。物を仕入れて売る、という仕事の話を、していきます。